こんにちは。東小橋薬局です。
皆さんは「ポリファーマシー」という言葉を耳にしたことがありますか?
「ポリ」は「たくさん」、ファーマシーは「薬」を意味し、ポリファーマシーとは「必要以上に薬が処方されている状態」あるいは「不必要な薬が処方されている状態」を指します。
ポリファーマシーの問題点は、薬剤費の増大や服用する手間があげられますが、より大きな問題は薬による副作用です。
高齢者では、服用する薬が多いほど副作用を起こす割合が高くなることがわかっています。
明確な定義は難しいのですが、6種類以上の処方がある場合がポリファーマシーの1つの目安とされています。
では、何故6剤以上なのでしょうか?
ある研究機関が行った調査では投与薬剤が6剤以上になると、薬物有害事象(副作用)発生率が急激に上昇することが明らかにされています。(図1)
厚生労働省の調査では、5剤以上の薬を服用している人の割合は、65歳以上で約30%、75歳以上で約40%と報告されています。(図2)
高齢者は複数の疾患に罹っていることが多く、その分使用する薬が増える傾向にあります。
また、薬を処方してもらえる安心感、中止への不安感などといった心理的な要因も大きいと考えられています。
高齢者に副作用が出やすい主な理由は、肝機能や腎機能の低下です。
それらの機能が低下すると薬の成分の代謝が遅くなり、かつ排泄される時間もかかるようになります。
つまり薬の成分が体内に長く留まってしまうため、期待されている効き目以上に効果が出やすくなりそれが副作用へ…と、繋がっていくのです。
さらに、多くの薬を服用するとより副作用が起こりやすいだけでなく、重症化しやすくなります。
高齢者の薬物有害事象の主な症状とその内訳は、「意識障害」、「低血糖」、「肝機能障害」、「電解質異常」、「ふらつき・転倒」です。(図3)
「意識障害」は、起こそうとしても目を覚まさない、起きているのに反応が鈍い、すぐに寝てしまうなどの症状が典型的です。
「低血糖」とは血糖が急激に低下することで、手・指の震え、動悸、頻脈、発汗などが生じます。
「肝機能障害」は、食欲減退、足の浮腫み、お腹の張りに加え、疲労が回復しない、体を動かすとつらいといったことがよくみられる症状です。
「ふらつき・転倒」に関しては、常用薬を5剤以上服用している人は危険性が1.3倍高まるとの研究結果もあります。
高齢になると骨がもろくなるので、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになり、寝たきりから認知症発症へとつながる可能性があります。
こんなに害があるなら、「今すぐにでも薬を飲まないようにしよう!」と思うかも知れませんが、ちょっと待ってください!
ほとんどの薬は必要があって処方されており、自己中断での服用中止は却って重大な副作用や事故につながることもあります。
ではどうすればよいのでしょうか?
1. 服用している薬剤は必ず伝えましょう!
病気ごとに異なる医療機関にかかっている場合、医師や薬剤師に使っている薬(サプリメント、市販薬も含め)を正確に伝えましょう。
お薬をもらう薬局を1か所に決めることで薬剤師が処方内容を把握し、薬の重複や副作用などに気づき易いという利点があります。
また、複数の薬局を利用するとしてもお薬手帳を1冊に集約し、上手に活用しましょう。
2. 今までと同じだと思わない!
加齢とともに体の状態、薬の効き方が変化します。現在の状態に適した薬を安全第一に考えた使い方が大切です。
医師は必要性に応じて処方しているので、あれもこれもと薬に頼らないようにしましょう。
3. 症状が落ち着いたことも伝えましょう!
医師は患者様から訴えがないと、処方を中止しづらいことがあります。
特に不眠、疼痛、便秘のように医師が直接観察し客観的に判断することが難しい症状は、「良くなった」という訴えが無いと、症状が継続していると判断されてしまう可能性があります。
症状が改善されたのであれば、薬の減量や中止ができるかもしれません。体調の変化についても伝えることが大切です。